「勉強しなさい」の魔法が効かない理由
「勉強しなさい!」
毎日のようにこの言葉を口にしているのに、子どもは一向に机に向かわない。むしろ言えば言うほど、子どもとの距離が開いていく気がする。そんな経験をお持ちの保護者の方は多いのではないでしょうか。「他の家の子はちゃんとやっているのに、うちの子だけ…」と悩む夜もあるでしょう。
ただ、長年塾で子どもたちを見てきて気づいたことがあります。勉強しない子どもには、必ずそれなりの理由があるということです。
机の上に答えがある
先日、ある中学1年生のお母さんから相談を受けました。「家では全然勉強しないんです」とのこと。そこで実際に勉強部屋を見せてもらったところ、机の上にはマンガが5冊、ゲームのコントローラー、お菓子の袋、そして謎の工作道具が散乱していました。
「さあ勉強しよう」と思って机に向かっても、目の前にはマンガの続きが気になる表紙。手を伸ばせばすぐにゲームができる環境。これでは勉強に集中しろという方が無理というものです。
環境を変えただけで劇的に変わる子は本当に多いんです。
「今でしょ」のタイミングが間違っている
もう一つよくあるのが、声をかけるタイミングの問題です。
子どもが好きなテレビ番組を見ているときに「勉強しなさい」と言っても、心の準備ができていません。むしろ「お母さんは僕の楽しみを邪魔する人」という印象を与えてしまいがちです。
塾でも同じことが起こります。休み時間に友達と楽しく話している子に「はい、授業始めるよ」と言っても、頭はまだ友達との会話の中。切り替えに時間がかかるのは当然なんです。
効果的なのは「30分後に勉強時間にしようか」といった予告型の声かけ。心の準備時間を作ってあげると、案外素直に机に向かってくれるものです。
「勉強しなさい」の正体
実は「勉強しなさい」という言葉には、具体的な指示が含まれていません。
大人にとって「勉強」は当たり前の概念ですが、子どもにとっては案外あいまいなもの。「今日は何の教科書を開けばいいのか」「どのページから始めればいいのか」「何分くらいやればいいのか」といった具体的なイメージが湧かないのです。
塾では「今日は数学のワーク12ページを20分で」といった具体的な指示を出します。すると「あ、そういうことか」という顔をして、意外にスムーズに取り組み始める子が多いんです。
指示が具体的であればあるほど、行動に移しやすくなる。これは大人でも同じですよね。
小さな成功体験の積み重ね
勉強しない子の多くは、実は「どうせやってもできない」という思い込みを抱えています。
以前担当した中学2年生の男の子は、数学が大の苦手で「僕にはセンスがない」が口癖でした。そこで試しに小学校レベルの計算問題から始めてもらったところ、久しぶりに「全部正解」を体験。その時の嬉しそうな表情は今でも覚えています。
小さくても「できた」という実感があると、次への意欲につながります。逆に言えば、いきなり難しい問題を与えてしまうと「やっぱりダメだ」という思い込みを強化してしまうことに。
レベルを一段下げてでも「できる」を積み重ねることが、長期的には大きな力になるのです。
親子関係という見えない要因
意外に見落とされがちなのが、親子関係そのものです。
普段から「勉強のことでしか話さない」関係になっていませんか?子どもにとって親との会話=勉強の話という状況は、実はかなりのストレス。勉強自体に対してもネガティブなイメージを持ってしまいがちです。
塾で伸びる子の保護者の方を見ていると、勉強以外の会話も大切にされています。学校での出来事、友達の話、趣味の話など、子どもの日常に関心を示すことで信頼関係が築かれているんです。
勉強の話はその信頼関係の上に成り立つもの。土台がしっかりしていれば、勉強についても前向きに聞いてくれるようになります。
今日から始められる小さな一歩
完璧を求める必要はありません。
明日から机の上を片付けて、「30分後に一緒に宿題を見ようか」と声をかけてみる。それだけでも十分な第一歩です。子どもの変化は案外、こうした小さなきっかけから始まるものです。
私たち塾講師も、一人ひとりの子どもに合った環境作りやアプローチを大切にしています。家庭と塾、それぞれの良さを活かしながら、子どもたちの学習をサポートしていければと思っています。